適当アナザーストーリーその①
別れて4年。
あんなに近くにいたのに、彼は遠くに行ってしまった。
「海でも行かない？」
趣味と言えるようなものは写真くらいでこれと言って取り柄もない私にあなたは優しく喋りかけてくれた。
20年間男っ気はなし。
彼氏なんてドラマの世界だと思ってた私に
初めて彼氏ができた。
彼は笑顔が素敵だ。
小学生のような無邪気な笑顔で誰からも好かれる。
太陽みたいな人。
それに比べて私は。
彼に見合うような女の子になりたい。
オシャレなんて興味がなかったけど。
ネックレスやら歩きにくい靴やら。
何でも買った。
「この匂い俺好きだな〜！」
なんだかよく分からないブランドの香水。
私は苦手な匂いだったけど彼が好きならそれでいいと思った。
「バーのイスみたい！これ買おう！」
訳わかんない理由で買ってしまった座高の高いイス。
今思えば無駄遣いだけど、楽しくて仕方なかった。
彼に気に入られたくて、彼好みの女の子になりたかった。
そんな自分が好きでもあり、嫌いでもあった。
充実してるようで、苦しい。
自分の中で答えは出てた。
「別れよう。」
もともと夢があるんだ、なんて言ってプラプラしているような人だし。
将来を考えるとこの人ではダメ。
なんて言い訳をした。
お互いお金がなくて旅行とかもたくさん行けなかったし、デートはいつも海ばかり。
それでも楽しかった。
アルバムを整理しよう。
車の中と海の写真ばっかり。
消すに消せない。
残していても意味ないのに。
スクロールしにくい画面を何度も何度も拭いた。
気づけば彼にLINEを送っていた。
もうやり直せないのは分かってるのに。
こんな夜中に迷惑だよね。
結局彼から返信はなかった。
画面越しであなたを見るとまだ心が痛いです。
でも元気そうでなにより。
ひとつだけ伝えられるなら。。。
高橋くん。
高橋瑛人くん。
印税半分よこせ。
あとそのイスからいい加減降りてこい。
みたいな話があったりなかったりしたみたいなのを聞いたような聞いてないような気がしたような
気がします。
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